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SNG meets Gates Foundation!

  • 執筆者の写真: Seattle Networking Group
    Seattle Networking Group
  • 2019年8月3日
  • 読了時間: 11分


2019年6月13日

馬渕俊介さん(ビル&メリンダ・ゲイツ財団 副ディレクター、戦略・オペレーション)

渡辺佑子さん(元ゲイツ財団勤務。現在はフリーのコンサルタント)

大関聡子さん(マイクロソフト本社 グローバルデジタルマーケティング戦略統括)

永田香澄さん(ポケモンインターナショナル 新規事業開発)


本日の学び:和を大切にし、感情に寄り添うことが、日本人として多国籍チームでリーダーシップを発揮する上で武器になる!


今回のゲストは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団で副ディレクターとして戦略・オペレーションをご担当されている馬渕俊介さんです。ゲイツ財団、世界銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JICAなどでの豊富なご経験を基に、多国籍チームでリーダーをやることについて、その時に必要な経験やスキルについて共有して頂きました!

今回のポイント

  • 和を大切にし、人の感情に寄り添いながら意思決定をすることが、異文化・多国籍のチームで日本人として特徴を出す上で武器になる。

  • 修羅場での最大限の努力が、人を強くする。

  • 人より先に5倍準備することで、不慣れな環境でも能力を最大限に発揮する癖をつけることが大切。

ゆうこの部屋 (お相手:ゲイツ財団 馬渕さん)

まずはじめに、元ゲイツ財団の渡辺佑子さんに聞き手になって頂き、馬渕俊介さんのご経歴・ご経験を対談形式で共有して頂きました。以下、一問一答形式で内容をご報告します。

「馬渕さんは何をされている方なのか?」


ゲイツ財団、世界銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JICAなどで、主に国際開発に関わってきました。前職の世界銀行からは、発展途上国の保健医療問題の対策を行なっています。アフリカでは助けられる命が沢山亡くなっています。ナイジェリアでは、十人に一人は5歳になる前に亡くなっていて、そういう状況を改善するために仕事をしています。


例としては世界銀行でのエボラ対策(2014)が挙げられます。世界銀行のシニアスタッフ100人ほどの大きなチームのリーダーとして、感染拡大をコントロールする為の仕事に携わりました。他には、ナイジェリアやタンザニア、また紛争地のソマリアなどで基本的な保健医療サービスを供給する仕事を行いました。


ゲイツ財団では、途上国の保健医療システムを強化するチームの戦略運営を担当しています。直近ではゲイツ財団が大幅に組織改変され、その中で統合されたチームの戦略や組織づくりの計画を立てています。


「どういう顔ぶれの人と仕事をしているか?」


世界銀行では、世界の全大陸から人が集まり、一緒に仕事をしていました。 ゲイツ財団では、働いている人は大部分がアメリカ人なので、世界銀行と比較すると文化に差がある部分があります。 日本人は東京オフィスを除けば自分一人だけという状況です。

「苦労していることは?」


世界銀行には、いろいろな人がいます。専門能力が非常に高い人もいるし、相手国の政治家にものすごく信頼されている人もいるし、その一方でマネージメントに弱い人もいます。そういう人たちをどうやって組み合わせるか、強みと弱みをどう組み合わせるかが大切です。日本人としては、和を大切にして、利害関係を理解し、人の感情に寄り添いながら意思決定をするのは、世界的にみるともしかしたら得意かもしれません。欧米人は理屈でぶつかりがちですが、日本人が緩和できる状況はたくさんあると思います。アメリカ的な意思決定方法は、実は世界的にはあまり多くなく、特にアジアやアフリカでは日本的な物事の動かし方(根回しや和を大切にすることなど)が多いのが現状です。

「今までのご経験で特に難しかったことは?」


南アフリカのマッキンゼーでは苦労しました。どちらかといえば、感情よりは問題解決にフォーカスしていますし、それを英語でやるのも大変でした。チームをまとめてクライアントのトップを相手にするマネジャーとして活躍するのはさらに難しかったです。様々な経験を繰り返すうちに、徐々にできるようになりました。現在はゲイツ財団の中でチームのCSOのような役割なので、その経験が生きています。


 *CSO: Chief Strategy Officer 最高戦略責任者


「馬渕流のリーダーシップ(和風+欧米風)はどうやって培われたのか?」


修羅場に強くしてもらいました。例えば、「明日からオーストリアの鉱山で40%生産性を上げてこい」というプロジェクトがありました。南アフリカから何もわからないまま行って、まったく鉱山知識のない仲間が世界から集められて仕事をしました。結果を出せない中で人が次々と解雇されて、結果がでないとコンサルティングフィーが半分になる、というような環境で頑張りました。


「日本と欧米の違いは?」


欧米人は直接言いにくいことも指摘する、という点も一つのカルチャーの違いとしてありますが、 意外と共通点が多いかもしれません。欧米人でも、プレゼンや発言が苦手で改善するために努力している人はたくさんいます。


「海外の組織で日本人と働かれたご経験は?」


世界銀行で、日本の財務省や外務省と働くことはありました。社会人としてのスタートが日本だったこともあり、日本の財務省や政治家の、それぞれの思惑や勘所がよくわかり、世界銀行と日本政府のつなぎ役としていい仕事ができました。


「壁の乗り越え方は?」


現在でも日々努力を続けています。 答えが明確でない複雑な問題に関して意思決定をすることは、非常に大変です。意思決定の精度が上がったのは、修羅場を乗り越えたからだと思います。


失敗例ももちろんあります。リベリアで保健のプログラムの計画を詰めていた時に、データを基に説明し切り満足感がありましたが、現地の保健大臣から拒否されました。現地の要望や考え方、利害関係をきちんと汲み取れていなかったことが原因です。理論で押し切って済む話ではなく、いろいろな状況の折り合いをつける必要がありました。


「これから先は?」


世界銀行でのエボラ対策で、効果が見えた(逆V字に感染数が下がった)時の感覚が残っています。エボラ対策の時は緊急事態で、国を超えて対策・協力できましたが、それが終わったら対応のスピードや効果がまた普段通りに戻ってしまいました。前述の通り、普段の状態でも亡くなっている人の数が多いので、緊急時並みの効果を出せるような仕組みを作りたいと思っています。


テクノロジーの活用もポイントの一つです。ルワンダでは、全国に必要な輸血用の血液のほぼ全てを、発注から30分以内にドローンで病院まで運んでいます。SNSを使用して処方箋を出している例もあります。テクノロジーで解決できる問題は多いですが、一方で様々なレギュレーションやリスクを考慮しなければ、社会実装、国のシステムとしての全国展開まで辿り着きません。テクノロジーと政府を仲介する仕事が今後大事になってきますし、ゲイツ財団ではそういう仕事をしていきたいと考えています。


(以下は参加された皆様からのご質問です。)


「マッキンゼーでのスキル習得はどうやったのか?」


難しかったのは英語だけではありません。最初の1年間は日本のオフィスで問題解決を訓練しました。日本オフィスは緻密に仕事をする特徴があり、その経験が現在も役に立っています。英語については努力を続けることです。例えばミーティングでも、人より先に5倍準備しておけば、議論に参加できます。


「修羅場において、自分のパニックをどうやって抑えたのか?」


小さな成功がモチベーションに繋がります。クライアントが上司の前で成功するように仕込んだり、どういうことでクライアントのマネジャーが悩み、どこが本当のボトルネックになっているかを明確化し共有することなど、コンサルタントだからこそ出せるバリューを考えてそこに集中することを心がけました。


「バーチャルミーティング(対面しないミーティング)で、使っているスキルやソフトは?」


マッキンゼーで一番苦労しました。ただ、バーチャルミーティングでは、事前に書いたものを読めるので、通常のミーティングよりも準備しやすいかもしれません。困った時は、「通信が切れたので、もう一回言ってください」と言って考える時間を作ったりしたこともよくあります(笑)


「テクノロジーの活用時、具体的にどうやって仲介するか?」


例えばAIを使用する医療診断では、いろんな規制がかかります。「5歳以下の子供の診断は機械に任せられないから、15歳以上限定で使用する」というような制限をかけて導入する例もあります。また、AIでの診断と人による診断を比較して、現地の人に納得してもらうことも重要です。貧しい地域に対するテクノロジーの活用は、ビジネスとして成立させることが難しいので、いかに政府を巻き込んで国の健康保険システムなどを通じてお金を出してもらうかが大切です。

パネルディスカッション:「異文化・多国籍のチームでリーダーシップを発揮するには?」

イベントの後半では、大関聡子さん(マイクロソフト本社)に加わって頂き、異文化・多国籍のチームでリーダーシップを発揮するにはどうすれば良いか、パネルディスカッション形式で共有して頂きました。


「簡単なご経歴と多国籍組織においてリーダーシップを発揮した場面をお教えください」

大関さん:


マイクロソフトの製品を売る時に、パートナーと協力して、どうやってテクノロジーを使って売っていくか、という仕事をしています。また、シンガポールで外資系の広告代理店で働いていました。


リーダーシップを発揮する時は、毎日です。現場の人が納得して協力してくれなければ、どんな戦略を立てても意味がありません。現場の人を説得して巻き込んでいく時が、リーダーシップを発揮している時だと思います。


渡辺さん:


国際開発関連の仕事を、JICAやゲイツ財団でやっていました。今はコンサルタントとしてマイクロソフトでオペレーションに携わっています。


リーダーシップは、家族と何を食べるかを決めるのもリーダーシップの一つです。仕事でも、肩書きがリーダーではなくても、特に初対面の人と働いたり巻き込んでいく時にリーダーシップが必要だと感じています。

「多国籍組織において人を巻き込む際に気にかけている点は?」


大関さん:


表現したいことが同じでも、プロセスが文化によって違います。フランスでのMBAで、Culture Map(「異文化理解力」という本が売れている)のクラスがありました。High context と low contextの文化の違いなどが例の一つです。文化ごとに仕事の進め方が異なるので、人を巻き込む時には気にするようにしています。

馬渕さん:


ゲイツ財団では、褒める時にははっきり褒め、フェアに評価をする文化があります。巻き込みたければいきなりミーティングをしてもいいですが、重要な関係者と一対一で重要な論点を整理し合意してからより多くの関係者と議論する場合と比較すると、その後の効果が全然違うので、日本型の根回しが生きることが多いです。


渡辺さん:


普段よく使うのはラーメンと犬の話です。異文化の人とは、なかなか共通の話題を探すのが難しいです。特に直接会話をすることが出来ない場合(バーチャルミーティングなど)に仲良くなるために、ミーティング開始時間より少し早くログインして、ラーメンや犬の話をしています。


「多国籍組織ならではの失敗談は?」


大関さん:


日本の広告代理店では多くの人が夜まで働いていました。そのあとシンガポールで働くと、夜まで働いてくれない人がたくさんいました。日本では「頑張ること」が評価されたが、海外では「生産性」「結果」が評価されます。いかにフェアに評価して、不平等感をなくすかが大事だと思っています。


渡辺さん:


自分のやった仕事は、アメリカではアピールしていないと誰も見てくれないです。アピール不足だと、アニュアルレビューの際に、昇給ではなくてギフトカード止まりになったこともあります。昇給をネゴシエーションするときに、文字に残したり、工夫するようになりました。


馬渕さん:


世界銀行勤務時にエボラの対策の際、日々死者が増える緊急時だったこともあり、まずはマッキンゼーマインドで始めました。ヒートマップのように、進捗が遅れているプロセスとその担当者を赤色に可視化していたら、「レッドばかりになって激しすぎて心がもたない」と言われ、白色にしたことがあります。


(以下は参加された皆様からのご質問です。)


「パブリックヘルスの博士課程で、何をやったか?」


馬渕さん:


担当していたナイジェリアのプロジェクトを題材に、 フィールドリサーチをしました。同じプログラムの中で、効果が出ているヘルスセンターと出ていないヘルスセンターを比較し、成功の要件を把握しました。またヘルスセンターのマネジメントの指標を作って、マネジメント指標と保健アウトカムの相関関係を分析したりしました。今の仕事でも、例えばテクノロジーがどのくらいインパクトを出すかを数字で出せるようになったので、博士課程での経験が生きています。


「複数の国と組織で渡り歩いてきた中で、何に今一番情熱を注いでいるか?」


馬渕さん:


仕事では、特に組織改変をする時に、トップダウンの戦略策定と、チームの中の各人の想いとの合わせ方を模索しています。 あとは、子供のオムツトレーニングです(笑)


大関さん:


仕事と家庭とのバランスの取り方を、模索しています。


渡辺さん:


国際協力を仕事としてやっていましたが、シアトルでテック系に転向しました。どちらかを選ぶ必要はなくて、どちらも生かしていたいと思っています。


「オリジナリティやスキルを積み上げていく中で、内面性や精神的にジャンプアップした時は?」


馬渕さん:


人の痛みがわかるようになって、とっつきやすくなったと思います。プロジェクトの進行と共に、心の安定も途上国では大事です。一方で、昔はギラギラしていましたし、高校生の時は怖がられていたかもしれないです。


大関さん:


アジアの女性はマイノリティーで、最初は自信が足りませんでした。自信を持てた時に、ジャンプアップできたような気がします。


渡辺さん:


自信を持てた時ではなく、逆に失敗した時に、メラメラします。

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